受信機では受信感度の基準単位として 0dBμ が使われますが 0dBm とは基本単位が異なりますので混同しないでください。コリンズなどでは 1μV の電圧を受信機に入力された場合0dBμと表示する場合もあります。ただ負荷抵抗は規定されていません。例として YAESU FT-920 の場合 SSG出力 0.5μV = 0dBμ で調整します。Sメーター校正の場合フルスケール +60dB 値としてはSSG(標準信号発生器)出力信号レベルは+100dBμ の信号で調整します。ちなみに S9 の信号レベルは +40dBμ です。電圧換算した場合 50μV 入力となります。機種により調整基準が異なるため確認作業が必要です。高周波ミリボルトメーター・SSGを取り扱うときには基本単位に注意が必要です。
道草の話-1
現在市販されている無線機の出力電力を見てみますと 大半出力電力は100W設計の機器と思います。販売されているシリーズ物として無線従事者ライセンスに合わせた機器として 100W,50W,10W機となっていますね。ファイナルアンプがパワートランジスター又はパワーFET・プッシュプルで構成されており同一回路において出力電力がメーカーで調整・固定されてでの各シリーズ機器販売です。このような設計のため電力変更作業はほとんどの場合製造者のみ変更可能な構造です。動作電圧は 13.8V が基準で設計されており 最大出力時の消費電流は20A前後です。送信機総消費電力(入力電力)は270W程度で100W出力が得られます。AB1級プッシュプル回路の場合正弦波波形で考察すると終段電力部片側では 13.8(V)÷√2= 9.75V(rms) 正弦波の片波を作成しています。波形合成しプッシュプルですので理論上出力電圧19.5V(rms)の信号がをメガネ型フェライトコア高周波トランスで昇圧し50Ω負荷時 100W出力では理論上78V(rms)ですが歪率の増加等を考えた場合 70.7V(rms)50Ω負荷 100W出力となっていると思います。現実には基本設計の最大値では歪が多くなり使い物になりませんので 余裕を持った回路設計となっています。又この機種ではリミッター機能(出力電力制限)があり 100W以上の出力は出せません。短絡・負荷インピーダンスの低下等による半導体の熱破壊などを防止するように保護回路を考慮してあります。
旧機種ですが FT-101E では終段管 6J-S6C パラレルでありリミッター機能がないため ボケていない真空管であれば歪(IMD)も増加しますが 送信バンドによっては 200W 近くの出力電力も観測できたとの記憶です。
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YAESU FT-920 ファイナルアンプ |
参考として上図は YAESU FT-920 ファイナルアンプです。画像左から初段ドライブトランジスターMRF555 ,中間段ドライブFET MRF5015 ,終段FETプッシュプルアンプ MRF255×2 ,右端はメガネ型昇圧高周波トランスで構成されています。各増幅段結合は同じくメガネ型コアによる高周波トランス結合で構成されています。プッシュプル回路の終段部FET上側には温度検出センサーが取り付けられておりFETが熱破壊防止策としてバイアス電源を制御しています。FT920S ,HF10W,VHF20W 機も同じ作りでありメイン基板で出力電力がメーカーで調整・固定されて出荷されています。筐体はアルミ材で形成されており左端の黒色は冷却ファンでありファン回転制御は下部にある温度センサーで回転制御されます。ON,OFF 制御のみで回転数制御方式ではありません。
今話題となっている IMD が良好の増幅回路に A級増幅回路が存在します。この回路では常時多くのアイドリング電流が流れており 発熱の多い増幅回路で有名です。プッシュプル回路片側動作では 13.8Vの電源電圧に対して正弦波の波高値(Peek to Peek)で動作するため実効値電圧は理論上 4.88V/rms となります。プッシュプル回路であれば波形合成後 9.76V/rmsが出力電圧になります。4倍に昇圧しても 39V/rmsであり電力値では30Wしか出力は得られません。終段電力増幅部が A級増幅回路とAB1級増幅回路ではこれだけの理論上出力電力差があります。
この機種ではAM変調 A3E 低電力変調が搭載されています。ファイナルアンプはAB級動作であり常時アイドリング電流が流れるA級動作点での運用となるため SSB・CWでは出力は100Wですが A3Eでは25Wしか出力は出せません。28MHz,50MHz帯のFM電波は常時連続した搬送波が出力されるため 出力段では一番過酷な動作状態ということができます。
出力電圧から逆算すれば 高周波トランスの巻き数比が1対4の場合 70.7V÷4=17.7V(rms)の信号源で100W出力となるわけです。
定格出力を得るには13.8Vの直流安定化電源部が必要であり 蓄電池のみでの運用時 12.0Vでは規定の出力は得られないと思います。
何故各社無線機の動作電圧がマイナス接地 13.8V なのでしょうか。これは車載可能な無線機として設計されているためです。エンジンが動いている時にはエンジンの動力により発電機(オルタネーター)が動作しており 電子レギュレーター回路により充放電制御されています。 12V バッテリーの充電完了電圧が 13.8V となった場合フローティングチャージモードに移行します。通常12Vバッテリーの場合6セルで1セル当たり起電力は2.0V×6セル=12.0V です。1セル当たり2.3Vととなると充電終了となるわけです。この充電完了電圧で各無線機は設計されています。エンジンが停止している場合新しいバッテリーでも 12.6V 前後しか電圧表示しないと思います。30年ほど前に製造された山小屋で使用している軽トラでさえ 交流発電機(オルタネーター)発電機に内蔵されているダイオードで整流後の直流出力規格として 12V-45A です。発電機の容量として540Wの能力です。
現代の車ではカーナビ・コンピューター制御エンジン・エアコン・電動冷却ファン等車載用電子・電動機器が増加し走行時車両で消費される電力も増大しています。12V-60A 前後から12V-100A 以上の発電機を搭載している機種も存在します。1.2KW 以上の発電能力です。
現代の車両に高出力の無線設備を搭載する場合 車両メーカーに相談・確認しなければ車両搭載電子機器類の誤動作も発生すると思います。最悪高出力の無線機を使った場合誤動作でエンジントラブル・交通事故もありえると思います。
例として12V,20Aであれば入力電力は240Wですね。定格の13.8Vの場合では276Wです。無線機の仕様書によると電源電圧は13.8V±10%が機器の動作保証電圧と記載されていました。13.8×1.1=15.18Vが機器に供給できる安全な最大電圧であると判明します。その場合15.2(V)×20(A)=304(W) 約300Wです。12Vの時と比較すると60Wも電力差があります。その結果当方の無線機では定電圧電源出力電圧は15.2Vと微調整して運用しています。ご利益は各バンドにおいて定格出力が得られる結果となり運転電流が少なくても定格出力となります。
保護回路として特に負荷インピーダンスが50Ω以下となった場合終段出力増幅部が電流増加となり 保護のため温度と電流制限回路が付加されています。
道草の話-2
トロイダルコアを使った機器は身近にあります。
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SWR・WATTMETR KURANISHI RW-315A |
今回アンテナ調整・無線機の出力状態を監視する測定器にトロイダルコアが搭載されています。通過型電力計とアンテナに正常に高周波エネルギーを送出しているかを測定するSWRメーターです。山小屋の無線設備では各無線機のアンテナ出力側に挿入している測定器です。波長ごと単独アンテナで運用しいるためこの測定器は複数台設置してあります。
尚 U /VHF機器には高周波ロスを考慮しアンテナ調整後は接続せずに同軸ケーブルをダイレクト配線としてあります。その測定器は RW-211A です。HF,VHF はM接栓 UHF1200MHz帯はN接栓仕様です。
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トロイダルコアの高周波電流検出回路 |
このSWRメーターの高周波検出部にこのトロイダルコアが使用されています。コアの中心部を貫いているのが同軸ケーブルの中心導体です。これが一回巻きのトランスとなるわけです。この中心導体に交流の高周波電流が流れるとアンペアの右ねじの法則により交流磁界が発生し この磁界がコアに巻かれたバイファイラー巻きのコイルに電流に比例した交流電圧が発生しこの値を計測する測定器です。各検出コイルの負荷抵抗は51Ωとなっておりこの抵抗に発生した電圧を検波します。得られた高周波電圧を周波数特性の良い
点接触型ゲルマニュームダイオードで検波(整流)から得た直流電圧で可動線輪(コイル)型直流電流計を駆動する構造です。コアに巻かれているコイルは各位相が逆となるように巻かれており SWR値測定のために使用されます。50Hz,60Hz商用電源でよく使用される線電流測定器クランプメーターとよく似通った構造です。
点接触型ゲルマニュームダイオード(Germanium Point Contact Diode)とは 1N60,SD46,1S188,OA90 などが有名です。ガラス管に封入された構造でよく観察すると細いタングステン針がN型半導体金属基台に針先と基台が接触しているのが観察できます。復刻版鉱石ラジオなどの検波用として現在でも需要があるようです。
ここからの計算過程は無視していただいて結構です ! ! !
アミドンカタログに記載及びトロイダル・コア活用百貨に記載されていた取扱電力の計算法
今回の資料ではMKS基準単位と電磁力学であつかうCGS基準単位が錯綜しており解読には単位変換が必要です。関数電卓片手に悩みます。
広帯域バランやパイ型フィルター等の回路での記述内容から考察(カタログデーターより)
Tシリーズのコア材♯2の場合 磁気飽和レベル16Kgauss 透磁率μ:10
Tシリーズのコア材♯6の場合 磁気飽和レベル20Kgauss 透磁率μ:8
(コイル単体の巻き線数は 10t ですので 入力端子側では L1+L2, N = 20(回巻き) とする)
今回の工作において選択したコアはカタログに記載されている T-157♯2材で 数値を代入し考察します。
コアの断面積
Ae: 1.14cm
2(平方) S :0.000114m
2(平方) 平均磁路長
l: 10.05cm 最短磁路長 ls:7.57cm
参考記載
トヨムラ発行アミドンカタログに記載されていた計算資料 取扱電力と磁気飽和の数式
使用する単位
B:ガウス(gauss) H:エルステッド(Oe) Erms:電圧(V) I:電流(A) f:周波数(Hz) AL:値(H/N
2(二乗)) Ae:断面積(cm
2) Le:最短磁路長(cm) N:巻線数(turn) π(パイ・円周率)
ACの場合
Bmax(gauss)=Erms×108(乗)/4.44×Ae×N×f
DCの場合
H=0.4×π×N×I/Le
DC重畳のACの場合
TOTAL Bmax=(Erms×108(乗)/4.44×Ae×N×f ) + (Idc×Al×N/Ae×102(乗))
上記数式より求めた値より (AT/m)のMKS単位に変換してコアの巻き数と電流の積を計算するように記載されています。計算のため必要な数式は記入されていません。
力量不足により計算できません。
別の項目では 取扱電力の簡単な計算方法 広帯域バランの場合
コアの外形寸法(吋・inch)×5W(ワット) 例として T-157#2の場合 1.57×5=7.85W この数値からではバランの工作はできません。
トロイダル・コア活用百貨よりの数式
使用する限界起磁力計算に用いる単位
B:磁束密度(Wb/m
2(平方)) H:磁界(AT/m) μ:透磁率(H/m) N:巻き数(turn) I:電流(A)
π:円周率 l:磁路長(m)注: lの求め方 l=l
min=2πr=
πd(d:コア内直径mmカタログに明記)
B=μH H=NI/l ∴B=μNI/l ⇒ ∴NI=Bl/μ の数式から
透磁率(定数)
μ =μo・μs
真空の透磁率(定数)
μo =4π×10
-7(乗)
比透磁率(定数)
μs (μs:#2コアは 10) (比透磁率 μs はコアの種類により異なる)
NI値(巻き数と電流の積)を求めると d:単位はmm (例 T157♯2の場合 d=24.1mm)
NI=B×
π×d10
-3(乗)/4
π10
-7(乗)×μs
NI=2500B×(d/μs)
上記数式となります。
ここで例題として T-157#2の場合 考察すると カタログ値から引用して μs:10
B:磁束密度を磁気飽和レベル 16000(gauss)とした場合 1.6(Wb)で計算すると
NI=2500×1.6(Wb)×(24.1mm/10) = 9640(AT/m) ?
現実の計算では磁気飽和レベルを B: 100(gauss ) ウエーバーの単位に変換すると B: 0.01(Wb/m)で計算すると 60.25 (AT/m)
逆算として使用するコアに流れる電流と巻線数を代入すれば磁束密度を計算することができます。なぜならNI値は電流と巻線数の積であるからです。
得られた NI値 回答は一回巻きでの電流値です。
得られた数値に交流の場合 0.707 を掛け算すれば実効値の数値となります。
上記計算式での答は 正解 ? 間違い ? 得られた計算値に疑問が残ります。無銭庵 仙人は学者・専門家ではありません。凡人です。回答は大まかで良いわけです。工作に必要な活用できるデーターが存在しません。詳しい理論・計算過程は専門家に任せればよいと思いますが ?
完成品を購入であればここまで悩むことはありません。しかしスペックについては比較検討資料となるため ある程度公表されている記載数値の理解が必要です。
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各種トロイダルコア左上より T-157♯2,T-200♯2,FT-114-61,T-106♯2,T-106♯2, |
広帯域バラン工作に当たり簡単に使用するコアの種類・大きさ及び 巻線太さ・巻き数での取り扱える最大電力及び扱える周波数の回答が得たいわけです。
最終的には諸問題もあると思いますが AT/mからコイルが一回巻きでの磁気飽和しない電流は何アンペアか ? それ以上高周波電流が流れた場合 コアが磁気飽和する数値を知りたいわけです。コアが磁気飽和すれば歪が増加し発熱現象が発生します。低周波での電源トランスなどではトランスの容量として VA (電圧×電流=電力値)により扱える能力が判明します。これと同様に高周波トランスにおいても使用するコアでの最大電力(ここでは電流値)が知りたいわけです。使用した資料には詳細が記載されていません。また計算過程も理解に苦しみます。記載されていた数式を解きましたがまともな答えであるとは思えません。目安と思いますが。
トロイダル・コアの限界起磁力
前項の数式からを使用するコアで考察します。
トロイダル・コア活用百貨記載 P-397付録の数式 下記を再度展開しました。
B = μH= μNI/l , H = NI/l , NI = Bl/μ , μ = μ
o・μ
s = (4π・10
-7)・μs , l min = 2πr又は πd μs = T系#2コアは 10 ,
B:磁束密度(Wb/m
2) H:磁界(AT/m) N:コイルの巻き数(t) I:電流(A) l:磁路長(m) μ:透磁率(μ=μ
o・μ
s) μ
o:真空中の透磁率(μ
o=4π・10
-7) μ
s:比透磁率(μ
s=μ/4π・10
-7)
π:(パイ,円周率) d:コアの内径mm ( 注 磁束密度を表すのに ガウス(Gauss) とWb/m
2 表示がありますので変換が必要です。今回 計算に使用する磁束密度 100(gauss ): 0.01(Wb/m
2)で計算
NI値とは
N: コイルの巻き数(t) ×
I: 電流(A)
コイルの巻き数と電流の積
NI = B・l/μ = B×(
π・d・10
-3) / 4・
π・10
-7・μs)
上記数式を展開した場合下記数式となります。
下記数式に
μs の値を代入するのですが 活用百貨では P-397,398
付録資料の μ
s 値を代入します。同じ数値なのですが アミドンカタログでは T系:permeability の数値 FT系: μ
i=B/H の数値で初透磁率と記載分を代入します。
(文献により μ,μ
o,μ
s,μ
i の定義が混乱しています 特に日本語での表記 透磁率,比透磁率,初透磁率との記載です。アミドンT系資料では μ はPermeability 訳せば透磁率ですが同じ事柄を 活用百貨では μ
s で表しています。μ
s は日本語では比透磁率であり意味が異なりアミドンFT系では μ
i 初透磁率です。同じ入力する数字です。何を信じればいいのでしょうか ? (解説者が変われば記載事項も変わる ? )
NI=2500×B×(d/μs) 展開された数式に数値代入して NI 値を求める
例として T-157♯2 のコアについてNI値を求める場合 数値は
μ
s:初透磁率=10 l: 最短の磁路長(コアの内周)d×3.14=75.7mm d: コアの内径 24.1mm B: 磁束密度 0.01(Wb/m
2) (付録 P-398 の数値)
今回の計算の場合 ガウスの単位は使われておりません。ウエーバーもしくはテスラの単位を使います。古い教本等ではガウスが使用されていますので 常用単位に変換します。
疑問点
最短の磁路長(コアの内周)=l での計算ですが コアの平均磁路長でないと正確な数値は導けないと思います。なぜならコアの厚みによりさまざまな長さの磁路長があり 単一面積での磁力線は同じとしてもコアの断面積が大きければそれだけ多くの磁力線束になると思いますが ? 簡易的な計算数値と判断します。∴コアの最短磁路長だけの数字で計算しておりコアの断面積は考慮していない簡易的な数値と思います。
カタログに Tシリーズのコア材♯2の場合 磁気飽和レベル16Kgauss(1.6Wb/m
2) 透磁率μ:10 ですね。ところが文献での代入値は B:磁束密度:0.01Wb/m
2 (100gauss)
(付録 P-398 の数値) で計算されています。コアが磁気飽和すれば歪が増大します。スプラッターの増加につながります。高周波トランスとして歪の少ない領域での入力値と解釈しています。オーディオ機器とは異なり 周波数特性・歪率・挿入損失などを計測する 高周波領域の精密測定機器は所有しておりません。
T-157#2 の場合では
NI=2500×0.01(
B)×24.1(
d)/10(
μs)=25×2.41 NI=NI(max)=
60.25 NI(rms)=
60.25×0.707=
42.6
上記数式を展開した場合の簡単な計算式として NI値は
NI=2.5×d内径(mm) で回答が得られます。
T-157#2の場合 NI=2.5×24.1(内径)=60.3 上記数式が簡素化されました。
T-200#2の場合 NI=2.5×31.8(内径)=79.5 この数値は P-398 に記載されている T-200#2の数値でした。
T系#6コアの場合は μs=8 として計算すれば NI 値が求まります。その時の簡素化した数式は
NI=3.125×内径mm で求めることができます。必要な場合は計算してください。
トヨムラのカタログに記載されていた材料特性表によると
T系#2(赤色)コアでの Optimum frequencyrange(最適周波数)は 1MHz~30MHz Typical frequencyrange(基準周波数)は 150KHz~50MHz
T系#6(黄色)コアでの Optimum frequencyrange(最適周波数)は 10MHz~90MHz Typical frequencyrange(基準周波数)は 1MHz~120MHz
上記周波数特性の記述です。HF帯運用(1.9MHz帯~28MHz帯)であれば T系#2(赤色)コア で十分に活用できると思います。又 21MHz帯~50MHz帯であれば T系#6(黄色)コア が活用できると思います。
トロイダル・コア活用百貨巻末付録資料
トロイダル・コアの限界起磁力の資料であり NI数値が記載されています。
(P-397 フェライト・トロイダル・コア P-398 カーボニル鉄・トロイダル・コア)
コア(磁心)に発生するエネルギー変換では巻き数が少なければ線電流が多くなり反対に巻き数が多ければ線路を流れる電流が少なくなります。これが
巻き数と電流の積といわれます。ここでは計算に電圧は必要ありません。記載されている NI値 積の値より巻き数で割れば電流が計算できるわけです。これ以外に高周波に関係するコイルのインダクタンスも考慮しなければなりません。それはカタログのAL値で計算できます。扱う周波数により最低巻かなければならない回数インダクタンス値についても考慮しなければなりません。
P-398 カーボニル鉄系の項目です。計算された数値として記載されていたコア種は T-200, T-106,T-80 だけです。
バランの最低使用周波数についても検討しなければなりません。インピーダンスが50Ωの場合 運用周波数においてのインピーダンス(XL)は 50Ω×5倍=250Ω以上であるかを確認します。
1.8MHz運用であれば XL=2πfL の公式から インダクタンス L を求めると L=250(Ω)/2π・1800000Hz=22μH 以上
3.5MHzの場合 XL=11μH 以上
巻いたバランのインダクタンス値を確認する必要があります。
下記表ではコア種別によるの NI値 の記載
T系コアの種類#2 μs:比透磁率 NI値 max (rms) 参考計算値 平均磁路長mm/直径mm 平均磁路長での NI値 最大値 (実効値) 平均磁路長/π(円周率)=平均磁路長での直径(mm)
黒色太文字 最短磁路長でのNI値 青色太文字 平均磁路長でのNI値
コア種 比透磁率 NI値 最大値(実効値) 平均磁路長/直径mm 平均磁路長でのNI値
T-200♯2 μS=10 79.5(56.2) 129.7/41.28 103.2(72.96)
T-184♯2 μS=10 60.3(42.6)計算値 111.2/35.39 88.48(62.55)
T-157♯2 μS=10 60.3(42.6)計算値 100.5/31.99 80.0(56.54)
T-130♯2 μS=10 49.5(35.0)計算値 82.9 /26.38 60.95(43.1)
T-106♯2 μS=10 36.0(25.5) 64.7 /20.59 51.48(36.4)
T-94 ♯2 μS=10 35.5(25.1)計算値 60.0 /19.1 44.75(33.75)
T-80 ♯2 μS=10 31.5(22.3) 51.5 /16.39 40.98(28.96)
注釈
上記計算過程では最短磁路長で計算されています。トロイダルコアの構造では最短磁路長 コアの内周部に磁束が集中するため 磁気飽和を考慮して計算しているようです。
平均磁路長項目での d の値は平均磁路長の直径で計算しました。コアの断面積による磁束密度を考慮した計算式でないため 平均磁路長でのNI値です。
平均磁路長での計算したNI値 最大値電流の積 NI/max 実効値電流の積 (NI/rms ) を青字で掲載しました。T-80より小さいコアは電力運用として扱えないと判断し省略。
(**透磁率 **ですがアミドンでは μ ,μi 初透磁率との表記 活用百貨では μs 表示 μs は P-28 では比透磁率と明記)
左の数値とカッコ内の数値では 0.707 を掛け算した数値であり正弦波の実効値を表します。設計においては実効電力が基準となるため 実効値電流で計算することをお勧めします。上記計算値において数式では断面積が考慮されていません。T-182.T-106 は断面積が大きく記載されている数値よりも大きな値と推察します。記載されていなかったコア種については数式に代入して得た値です。
ここで不思議と思われませんか。T-182♯2のデーターです。T-157 と計算数値は大きく変わりません。コア外径はT-157 に比べて大型です。断面積ではT-157よりも大きく計算値よりも扱える電力も大きくなると思います。T-106とT-94でも同じことがいえると思います。
参考計算値 と解釈ください。
最短磁路長での計算を平均磁路長での直径で計算しなおしました。平均磁路長の項目がそのNI値です。平均磁路長についてはトヨムラのカタログに明記されています。
T-182 を入手したかったのですがこのコアは見つけ出せませんでした。現在入手可能なコアはT-200,T-130,T-106系と思います。
トロイダルコア 品種による自動計算式見つけました。参考としてください。コア種・巻き数を入力すれば交流電流が計算できるサイトです。巻き数を1回と入力すれば求めるNI値が求まります。又巻き数によるインダクタンス(μH)も計算できます。フェライトコア(FT)用途も記載されていましたがNI値は巻き数での交流電流値は表示されています。
工作事例でよく FT114♯43 が使われていますが このコアの場合 μs850 でありその時の磁束密度 B は 0.1Wb/m2(1000guass) で計算はできます。数値を代入し計算すると1.5Aの電流値を確保する場合 数回巻いた場合でもバランとしては使えません。無線機の電力値としては10W未満のバランしか工作できません。コア種を♯61・♯63材に変更すれば可能と思います。 FT コアは透磁率は T コアに比べ高いため 巻き線数を大くすることはできません。
計算事例として
FT114♯43材の場合
NI=2500×0.1(B)×19(d)/850(μs)=5.5(3.8)
NI値が5.5の場合実効値NI値3.8 とすれば 電流が約1.5A(電力値100Wのときの電流)であれば巻き数は2.5回しか巻くことはできません。
透磁率の低い♯61(μs125)NI 35、♯63(μs40)NI 118 とすればコイルの巻き数が多くでき 扱える電力値も増大します。4750/μsで計算できます。
♯43材の場合 FT140♯43場合のNI値は4.75 FT240♯43場合のNI値は7.39 FT114♯43場合のNI値は3.96 です。
上記数値は下記計算式から得た交流実効値(rms)電流値です。FTコアの場合巻き線数の多くは数回巻きで工作されています。
http://jf1vru.web.fc2.com/troidalcore/IronCore.htm
疑問点もありますが得られたNI数値からの結論
T-200♯2の場合を例とすると 1回巻きの場合最大値電流は 79.5A と実効値電流( 56.2A) と判明しました。コアの積値が判明すれば簡単に巻き数・電流は計算できます。
コイルの巻き数設計では L1巻線を15tとすると 入力側 巻線 L1+L2 は30回巻きとなります。この場合では 2.65A (1.87A) と計算できます。実効値電力 175W です。
巻き数が L1:10t であれば20回巻きとなり 3.975A (2.81A) です。実効値電力 395W です。
巻き数が少なくなれば扱える電流は大きくなり 同じコアでありながら取り扱える電力値も大きくなります。
今回採用した T-157♯2 の場合L1が15tであれば30tで計算します。
最短磁路長での計算
60.3(42.6) から計算すると2.01A(1.42A) であり実効値電流で考察しても 連続運用 約100W型 の広帯域バランといえます。コアの断面積は比較的大きく余裕があると思います。現物のL1巻線数は13t ですので余裕です。100Wでの電流値は 1.41A/rms です。
平均磁路長での計算
d(直径) の値を平均磁路長の直径で計算しました。
80.0(56.5) です。実効値のNI値では56.5であり30t であれば 1.88A です。電力では176W です。設計値100W とするとバランとしては余裕があると思います。
これらのデーターよりバランの巻き数は10t~15t前後が最適との結論です。コアの容量が小さい場合(コアが小さくなれば)は巻き数も減らさなければ扱える電力値は大きくなりません。
今回使用したコア材 T-157#2 は簡単に入手できないと思います。後日アミドン製 T-157#2 は新品を3個入手できました。気長に探せば見つかるかもしれません。工作する場合入手可能なコア材を選択すると T-200#2, T-130#2, T-106♯2,と思います。
例題として
T-130#2 材の場合 最短磁路長NI数値は49.5(35.0)計算値 です。 35.0A/T (実効値)での L1 + L2 巻線数を20回巻きとした時場合流せる電流は 1.75A (153W)です。 50Ω負荷での 100W 出力の実効値電流は 1.41A ですので100W型バランといえます。電力値が不足する場合コアを2枚重ねとすれば余裕です。2アマ対応の最大電力200Wの場合はコア2枚重ねが必要と思います。
平均磁路長60.95(43.1)の場合 L1 + L2 巻線数を20回巻では 232Wです。
T-106#2 コア材の場合最短磁路長 36.0(25.5) 実効値の場合 L1 + L2 巻線数を20回巻きとした時には 1.275A (81.2W)ですので1.41A(100W)と比較すれば電力容量が不足します。
L1 + L2 巻線数を16回巻きとした時には25.5A/16t = 1.59A 実効値電流 1.59A(126.4W)ですので設計上100W以上であるということができます。
空中線電力50W移動局運用であればL1 + L2 巻線数を20回巻き 78.1W ですので問題はないと判断できます。
平均磁路長の場合NI値は
51.48(36.4)から L1 + L2 巻線数を20回巻きの場合
165.6W L1 + L2 巻線数を16回巻きの場合
258.8W といえます。
上記計算式のように小さなコアであっても巻き数を変更することにより扱える電力は変化するのが確認できると思います。巻き数が少なくなればインダクタンス値も少なくなります。
コアの種類及び巻線数が机上で計算できましたので この数値をもとにバランを工作します。
机上計算値
T-200#2 コア単体で計算すると 最短磁路長NI 値は 79.5(56.2) から
L1 + L2 巻線数を20回巻きとした時場合流せる実効値電流は 2.81A です。電力値では 395W です。
平均磁路長NI値を103.2(72.96)で計算時には 3.64A 電力は 662W です。500Wはクリアします。
20数年前に参考としたCQ出版の雑誌 ダイナミック・ハムシリーズ ワイヤー・アンテナ(1996年1月10日第3版発行)に記載されていた工作事例バランを検証します。
110ページに資料等が記載されていますが 使える電力値については記載されていません。コア材はT200#2赤色のコアです。1.6mm直径のPEW線を12回巻きです。
最短磁路長NI値79.5(56.2)でのL1 + L2 巻線数を24回巻きとした時場合流せる実効値電流は 2.34A です。電力値では 273W です。300Wには不足しますが2アマの最大電力値200Wはクリアできます。
平均磁路長NI値を103.2(72.96)で計算時には 3.0A 電力は 462W です。
又 L1 + L2 巻線数を30回巻きとした場合は
最短磁路長NI値79.5(56.2)でのL1 + L2 巻線数を30回巻きとした時場合流せる実効値電流は 1.87A です。電力値では 174W です。200Wには不足します。
しかし平均磁路長NI値を103.2(72.96)で計算時には 2.43A 電力は 295W です。2アマはクリアします。
T-200#2 コアを2枚重で計算すると 最短磁路長NI数値は2倍の 159(112.4) で計算した場合
L1 + L2 巻線数を20回巻きとした時の実効値電流は 112.4A/20t=5.62A 5.62Aですので 電力値は 1579W です。 1KWのバランといえます。
L1 + L2 巻線数を30回巻きとした時の実効値電流は 112.4A/20t=3.75A 700W, 1KWには不足します。しかし
平均磁路長NI値を206.4(146)で計算時には 4.86A 電力は 1180W です。1KWのバランといえます。
直径1.8mm以上のPEW線を巻けば余裕ですね。クリエート・デザインの高出力対応バランを購入できる裕福な方は別ですが。
以上の考察結果から最大電力 100W を確保したバランを設計するに T-130#2 より大型のコアを使わなければクリアできないと判明します。
200W対応には T200#2 コア使わなければなりませんね。
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防水ケースの選択 VP-50,VP-40用TSキャップ を選択 |
今回作成したバランを収納するために選択した部品は全国各地に存在するホームセンターなどでも簡単に入手できる 水道工事材料のビニールパイプ用メクラキャップを採用しました。正式名称はTSキャップです。サイズはVP-13からVP-50用の各パーツが入手できます。水道工事用であり防水性及び強度の面でも問題はないと思います。入手可能であれば対候性のHI-VPが最適であったのですがホームセンターにはこのサイズは販売されていません。VPのような灰色ではなく紺色の材質です。同じ場所にVPパイプ用接着剤も販売されています。接着剤にもVP用、HI-VP用、耐熱HT-VP用がありますので購入時には注意してください。この工作ではプロ仕様の大型缶接着剤は必要ないと思います。購入したのは通称VPのり100g缶です。
同じような塩ビパイプにVU管が存在しますが排水パイプ用途として製造されておりパイプの肉厚が薄く強度的にも貧弱なパイプです。VE管は電気工事用で肉厚は薄いタイプです。
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VP-40,VP-50 TSキャップにN型コネクターを取り付け |
今回使用した同軸コネクターはN接栓です。N接栓中心導体の周りは耐熱性に優れたテフロン製です。M接栓と異なりコネクターでのインピーダンス変化が少なく低損失のコネクターです。又コネクター接続部はゴムパッキンで防水してあり 今回15年ぶりのバラン部交換作業ではコネクター内部には水分が侵入した形跡はありませんでした。山小屋では無線機からアンテナ給電点までは約60mほどあります。同軸ケーブルが結構長いため低損失のフジクラ 8D-SFA を使っています。アマチュア無線では1200MHz帯無線機に使用されているコネクタータイプです。それと同軸ケーブルの重量も5D-2Vに比較すると重くなり 給電点高さも15mほどです。そのためバランはセンターポールから吊り下げる構造での運用です。これらの理由によりバランは機械的強度にも注意しなければなりません。これらの経緯からVP TSキャップを採用しました。
TSキャップの内径は VP-40用 直径48mm VP-50用 直径60mm です。
この結果からTSキャップ内に収納できるコア材の直径は VP-50では50mm コアの種類では T-200タイプが収納できます。 VP-40では40mm以内のコアであればコイルを巻いても収納できる寸法です。この収納できるコアは T-157タイプより小型のコアが収納できます。
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VP-40用 TS-40キャップ N接栓取りつけ状態 |
上図はTSキャプにN接栓を取り付けトロイダルコアを取り付ける前の配線準備です。底面上部に小さな穴を開口してあります。この穴はもしも内部に水分が侵入した場合この穴から内部の水分を外部に放出するスローリーク穴です。N接栓は4本のビスナットで内部のアルミ板とで固定します。コネクター取り付け穴と取り付けベース部は防水のためエポキシ接着剤で接着固定します。黄色のビニル電線は1.25SQ配電盤用です。先端は4φの圧着端子で圧着後半田付けしてあり電線との付け根はシリコン接着剤で防水後熱収縮チューブで保護します。この黄色い電線の端子ははアンテナ線と接続後自己融着テープで防水処理します。接合はSUS-M4ビス,ナットで固定します。黄色の絶縁電線は本体低部の貫通穴ではエポキシ樹脂で防水処理します。N接栓からの配線は1.6,IV線でグラスエンパイヤチューブとテフロンチューブで保護絶縁処理としてあります。
下記 50Ω対50Ω 1 : 1 の強制バランの特性 コア種 T156♯2
L1巻き数 14t L1+L2=28t 全体巻き数 42t
最短磁路長での NI値 42.6(rms) 許容電流 1.51A(rms) 許容電力 114W L1+L2のインダクタンス 11μH 3.5MHzでのリアクタンス(XL) 241Ω
又平均磁路長でのNI値 56.54 (rms) 許容電流 2.01A(rms) 許容電力 202W
工作した強制バランの特性です。バランとして活用できる最低周波数は 無線機のインピーダンスが50Ωですので 5倍以上のリアクタンス値 250Ω以上が理想ですが ほぼ5倍弱の値であり 何とか3.5MHz帯以上で使用可能な強制バランと検証できます。
今回工作したバランとしては 100W型の強制バランです。3.5MHz帯以上の周波数で使用できる強制バランと判明しました。現実にはほぼ 200W までの能力と思います。
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VP-40 TSキャップ内にトロイダルコア T-157♯2 14tを実装 |
本体内部を貫通しているM5-100mmの寸切りSUS長ねじです。もちろん本体貫通部はシリコン接着剤で防水してあります。ナット及びスプリングワッシャーもSUSです。このねじの両端にアンテナ線接続用の絶縁碍子とバラン吊り下げ用金具が取り付きます。上部防水キャップはVU-40用キャップです。接合用パイプはVU-40ですがパイプの外形はVP用のパイプと同じ寸法です。完成後キャップと本体とはシリコン接着剤もしくはシール材で防水します。
HF帯アンテナは山の尾根に多段鋼管柱による建柱状態であり台風が接近しても常時山小屋には住んでいないため台風に備えた保護対策ができません。そのためこのようにバランも十分な強度としてあるわけです。柱の支線は14SQと22SQワイヤーでありターンバックルと巻きぐりで張力調整してあります。しかし3.5MHz帯アンテナ支柱として1本だけは15m-h孟宗竹柱です。これが唯一悩みの種です。その後地上高 14.5m の鋼管柱4本つなぎとして改修しました。
3.5MHz帯・7MHz帯アンテナ線は身近にあるIV線ではありません。屋外飛ばし配線用2mm,DV線を使っており通常の柔らかいIV線の銅線と異なり針金のような硬さです。
このように山小屋では数多くのアンテナ群で運用しているため アンテナ線を引っ張っているロープは 対候性の良い直径6mmクレモナロープは高額です。工事現場でよく使われている黄色・黒色の通称トラロープは安価であるため多数箇所で使用しています。
このトラロープは5~6年ほど使用すると自然劣化しますので その都度交換作業が必要です。特に黄色のロープ材がひび割れが発生し交換目安となります。
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完成した各種バラン |
改修前まで山小屋で使用している広帯域バランはアミドンT-200♯2で工作していました。今回アンテナを下ろし分解後 再利用としてT-200#2コアのバランをVP-50 TSキャップに実装し組み立てました。その画像は下部に記載しました。現在21MHz帯のバランとして運用しています。
以上の工作結果から コアが同一であっても巻線回数が少ない場合は扱える電力が増大することが理解できると思います。巻き数が少ない場合インダクタンス値も小さくなり低い周波数では効率が悪くなると思います。カタログからAL値が判明すれば机上でインダクタンスの値も判明します。
許容電力を上げるには同じコアを2枚重ねとして工作すれば電力も2倍になると考えます。これらの結果から100W程度のバランを工作するのにT-130型であれば2枚重ね 一個でであれはT-157からT-200程度のコアが必要と思われます。
巻く電線太さについてはUEW・PEW線1mm以上の太さを巻けば50Ω負荷に対して目的の電力値により電流値が判明しています。電線太さよりの許容電流値換算結果から安全に使用できると判断できます。
今後の課題としてフェライト系FT型のコアで挑戦・実験したいと思います。
作成したバランの工作リスト
使用コア マイクロメタル社 T-157♯2
巻線 PEW通称ホルマル線 1.2mm 80cm ×1本(L2)
PEW通称ホルマル線 1.6mm 80cm ×2本(L1,L3)
(3本をトリファイラー巻きとする)
1.25SQ絶縁電線 適宜
圧着端子2-4 2個
1.6 IV線 適宜
N接栓 1個 (M接栓でも可)
M-3 ビス・ナット等 4組
エンパイヤチューブ・テフロンチューブ 適宜
本体ケース VP-40 TSキャップ 1個
本体キャップ VU-40 キャップ 1個
VU-40 塩ビパイプ 適宜
M-5 SUS 寸切ねじ 1本
M-5 ナット・ワッシャ等 適宜
接着剤 VPのり 2液混合エポキシ接着剤
その他小物 一式
材料のPEW線の太さが異なるのが疑問と思われる方へ
3本の内 L2 はアンテナ線に流れる電流と無線機からの電流が逆位相となるため理論的には電流はこのコイルでは打消し合い(逆位相)があり電流が流れないので巻線は細くしても問題はありません。
下記強制バランの特性 T200♯2
L1+L2=26t 最短磁路長での NI値 56.2A/t 許容電流 2.16A 許容電力 233W インダクタンス 8.11μH 3.5MHzでのリアクタンス 178Ω 7.0MHzでのリアクタンス 357Ω
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オープン型バランを巻き替え 防水ケースVP-50 TSキャップに収納 T-200♯2 1.3mm 13t |
入手可能なコアを使った強制バラン
現在入手可能なコアとしては T200♯2 と T130♯2 コアは簡単に入手できると思います。そこで T130♯2 コアを使った 100W電力対応の強制バランを設計します。
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T130♯2コアに巻き上げた強制バラン 13t
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上図は T130♯2 コアに巻いた強制バランの構造です。コアの寸法は外形33.0mm,内径19.8mm,コア幅11.3mmのコアです。ここで T130♯2 コアのNI値は最短磁路 35A/t 平均磁路長での計算したNI値は 49.5A/t です。NI値 35A/t で計算すると L1+L2 が20回巻きであれば1.75A/rms 24回巻きであれば 1.46A/rms と計算できます。50Ω対50Ωの強制バランの場合コア種が決まれば巻き数が確定します。平均磁路長の場合であれば L1+L2 が24回巻きであれば 43.1A/24t =1.8A ですので電力値は 100W をクリアできます。コアの内周を計算すると内径19.8mmですので L1が12t であればトリファイラー巻きですので全巻き数は36回巻きです。内周は 19.8×3.14=62.2mm ですので最大巻き線太さは 62.2÷36=1.72 ですので 1.6mm 直径以下の線材を使わなければなりません。
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VP-40 TSキャップ内に収納した T130♯2 に巻いた強制バラン |
上記工作した強制バランは線材 1.3mm 直径の PEW線 を13回 バイファイラー巻きとしました。NI値 35A/tの場合1.35A/rmsで 100Wには不足しますが NI値 49.5A/tの場合1.9A/rmsですので 100W はクリアした強制バランといえます。PEW線1.3mmの場合1SQ以上ですので安全線電流値もクリアしています。
L1+L2 でのインダクタンス 7.43μH 3.5MHzでのリアクタンス 161Ω 161Ω/250Ωの場合 64%ですが 何とか3.5MHz帯でも運用可能と判断します。
なおコアには線間・コア間,絶縁対策としてアセテートフィルムをコア表面に接着後線材を巻き上げています。
強制バラン完成品を水道工事用 VP-40 TSキャップに組み込めば完成です。空中での振動でコアが移動しないように 8D-SFAに使用されていた高発泡の絶縁体で固定してあります。
アマチュア無線開局当初から工作内容は文献などを参考に様々な機器類を工作してきました。現在振り返れば納得の得られない工作も多々あります。日本人の得意技とする
ものまねです。今回トロイダルコアの理論まで検証しましたが納得のいく結果は得られませんでした。人生勉強不足と思います。様々な機器を工作するのにやはり理論の裏づけが無いと安心できません。一種のこだわりです。メーカー品と異なり見栄えは良くありませんが工作に使用した材料は国内どこでも身近にあるホームセンターなどで販売されているものを加工しています。簡単な構造ですので 工作へのチャレンジ手助けになればと思いくだらないブログを立ち上げてしまいました。
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3.5MHz,7MHz ダイポールアンテナに装着 上部 避雷針 緑色 38SQ 被雷導線 |
広帯域バランですが理論的には電磁結合の共振していない回路と思います。しかし3本線を平行もしくはより合わせ(ツイスト撚り)でコアに巻き付けます。この電線間の静電容量も馬鹿になりません。最低 数10pF 前後存在します。一部は静電結合とも言えます。これらの詳しいトランス・高周波理論については専門の学者様にお願いすることにしてアマチュア的な実用性のある資料が欲しいわけす。
まとめ
HF帯広帯域バランの工作においてコアの選別とコイルの巻き数が不満足ながらほぼ自分なりに理解できたつもりです。特に巻き数ですが10回から多くて15回前後と思います。線材も極端に太くしなくても100W程度であればPEW線0.8mm以上あれば電線の許容電流はクリアできます。HF帯広帯域バラン購入するとすれば高々5000円前後ですが ただ同軸接栓はM型ばかりでN接栓仕様品は販売されていません。各個人での運用形態は異なると思いますが これらの理由で工作することになりました。業務用途の携帯電話基地局などの無線機ではアンテナから無線機までは同軸ケーブルの太さは29D,20D,10Dと特殊な同軸ケーブルです。中心導線は表皮効果により導線の外周部を高周波電流が流れる性質のため中心導線は銅線ではなく銅パイプの構造です。シールド層の外側導線は網線ではなく蛇腹のようなフレキシブル銅管です。又太い同軸ケーブルの重量も軽量化となります。アンテナから無線機までGHz帯を扱う同軸ケーブル長さが60m以上となる基地局もあります。最終的に無線機器との直前結合はほとんどの場合N接栓で5D,8D仕様です。
山小屋での同軸ケーブルは フジクラ 8D-SFA 高発泡 外部導線は網線と銅箔の2重構造であり低損失です。同軸中心導線は直径約3mmです。5D-2V(FB)と比較すると低損失で周波数特性も違います。10D-2Vと比較しても特性は劣りません。ただ購入価格は結構高額となります。アマチュア無線では1200MHz帯・2400MHz帯無線機ではよく使われる同軸ケーブルです。この同軸ケーブルをHF帯ダイポールアンテナの給電線として使用していますので広帯域バラン部には10m程の同軸ケーブル垂直重量荷重が発生します。バランも強固な形状としなければなりません。その意味もあり通常のダイポールアンテナとは異なり15m/hセンターポール先端からバランは吊り下げ構造としているわけです。
以前のバランから今回作成したバランに交換です。アンテナの同調を再調整しました。各アンテナエレメントの長さ調整です。3.5MHz帯は3 555KHz が VSWRはのデップ点で1.1の値です。7MHz帯は 7095KHzがディプ点で同じくVSWRは1.1の数値まで追い込みました。まずは大まかにDELICAのグリッドディップメーターで同調周波数を確認すると 希望している周波数より同調点は高くなっており エレメント長さを調整しなければなりません。2mmのIV線をエレメント両終端に調整用の髭を取り付け調整です。同調周波数になるようには2~5cm単位で長さの調整です。今回 50cm程度長さの髭を作り調整です。通常使用している帯域では悪くても1.5以下の数値となっており 無線機本体内蔵アンテナチューナーなどは使わずに運用できます。
希望した同調周波数中心点に髭の長さでの調整では 短く切り詰めた場合 再度髭状の調整用エレメントに交換すれば問題は解決します。最良のSWR値1.0に近づきました。周辺の障害物などによりアンテナ線の対地間容量などの影響により多少同調周波数は変化しますが 最良点ディップ点ではSWR値は1.1になりました。
同様の複数個アンテナバランを工作しましたが コア材カーボニル鉄粉アミドンTシリーズ#2系のコアであれば21MHz帯まであれば問題なく動作することが確認できました。
以前工作したアンテナ・チューナーはお蔵入り状態です。調整後交信しましたが問題は無いようです。夕方からの暇つぶし策は
さんはん 運用です。冬場以外の季節では 昼間百姓の真似事と草刈りで多忙です。
追記 1
先日18MHz帯のダイポールアンテナを工作しました。主として運用している帯域は 3.5MHz 帯であり 地上高も 15mh 鋼管柱で運用なのですが 無線機の新スプリアス規格対応無線機として機種入れ替え変更申請後18MHz帯も運用可能となり 専用のダイポールアンテナを工作しました。
1/2波長ダイポール型のアンテナは今回作成したバランを使って 比較的簡単に各バンド専用アンテナを工作することができます。又SWR値も1.0近くまで落とすことができます。
基本的な設計方法として一般的に公表されていますが 実際の工作状況の過程を述べますと
まずは運用する周波数の確定です。18MHz帯の場合運用許可されている周波数はバンドプランとして 18.068 ~18.168MHz が割り当てられています。各自主に運用する周波数は異なりますが SSB での運用は 18.110~18.168MHzが運用幅です。18MHz帯は100KHzしか帯域幅はありません。アンテナ設計に際し中心周波数を18.135MHzとして話を進めます。
アンテナエレメントとしての長さは
300000000m(光速) / 18.135MHz (運用周波数) = 16.54259m(一波長・λ)
16.54259m λ (一波長) / 4 = 4.135m(1/4波長)
4.135m(1/4波長) × 0.95(アンテナ短縮率) = 3.928m
3.928m がアンテナエレメント長さと計算できます。
アンテナ線材として今回使用した電線は2mm/IV線です。まずは4.2mのIV線材を切り出し 絶縁碍子を両端に取り付けます。片端はバランから取り出している線材とをリングスリーブ小で圧着し自己融着テープで防水します。碍子とアンテナ線はバインド線で固定します。
これからは実際にアンテナを設置しアンテナアナライザーもしくはSWR計を使って希望する周波数に同調を取ります。今回の場合18.135MHzを中心にSWR値は上昇します。
調整方法は両端を100mmほど切断しながらSWR値が 5 程度に追い込めれば 20mm ほどの長さで微調整すればアンテナ工作完了です。
もしもアンテナ線を短くした場合 不足分を2mmIV用直スリーブで圧着し防水すれば問題ありません。両端はアンテナの髭状態です。
工作結果4.2mから400mm切断した長さでSWR値は1.0近くまで落ち込みます。
現実には碍子での線材実長とバランからの線材実長を加算した線材長さは ほぼ3.928m付近で完了です。
アンテナエレメント長さとして計算過程においては 今回工作したバランからの黄色取り出し線・1.25SQ電線もエレメントの一部です。それと両端の碍子折り返し配線分と調整用髭長さ分も加算して計測しなけりばなりません。
このように完成したアンテナが同調している場合 21MHz帯ダイポールアンテナと比較して 受信ノイズレベルは Sメーター読みで2~4程度上昇します。
アンテナ設置直後 春のお彼岸でしたが北海道と58程度でつながりました。アンテナ高さは8mほどです。
今回作成したバランであればHF帯各バンドの設計において上記計算過程で簡単にアンテナ工作ができると思います。
追記 2
令和2年4月21日から 1.9MHz帯が運用可能なバンド拡張です。電信運用のみであった帯域が拡張され音声による通信も可能となりました。そこで今回1.8MHz帯ダイポールアンテナの新設です。
拡張された通信帯域は1.800MHz~1.875MHzが割り当てられその中でSSBでの運用においては運用中心周波数を 1.850MHzとしてアンテナ設計をします。
3億メートル(C:光速)÷1850000Hz(f:周波数)=162m(λ:波長)
1λ(波長)÷4=40.5m(1/4λ) 40.5m×.095(アンテナ短縮率)=38.51m
完成した1.8MHz帯の強制バラン コア種 T157♯2 L1:17t
最短磁路長での NI値 42.5A/t L1+L2=34t 最大電流値 1.25A/rms 最大電力値 78.1W
平均磁路長での NI値 56.5A/t L1+L2=34t 最大電流値 1.66A/rms 最大電力値 138W
L1+L2のインダクタンス 16.2μH 1.85MHzでのリアクタンス 188Ω 188Ω/250Ω(50Ω×5)=0.752
インピーダンス比でのバラン最低運用周波数の約75%ですので 何とか1.8MHz帯 100W型のバランといえます。
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1.8MHz帯用として工作したバラン L1:17t コア種 T-157♯2 |
アンテナエレメントとして 38.5m のアンテナ線を2本用意します。アンテナ線としては結構長い電線となりますので 2mm直径(3.5SQ相当)DV線 を用意するのがベストと思います。2mmDV線は通販で切り売り品 50m又は40m巻きが入手できると思います。当方は DV-R 2.0mm,3C 40m 切り売り品の購入となりました。
(参考 DV-R 2.0mm×2C 50m切り売り 税込み 6,000円前後・投稿初期)
アンテナを1.850MHzに同調を取るのに体力勝負です。何故かと言うと空中線の両端をカットするのにアンテナを地面に下ろさなければなりません。それも両端を同じ長さで切断しますが全長80mとなればアンテナの上げ下ろしを含めると結構体力を消耗しています。設計値38.5mでしたので多少長めの1/4λ,39mから調整開始しましたしました。SWR値が目的の数値になっていません。この状態で共振周波数は1.8MHzよりも低く数回20cmずつ切断しましたがSWR値は下がりません。最終的には両端各50cm切断です。1/4λ 37m で1.870MHz付近に同調しVSWR値は目的の1.1まで追いこむことができました。1.825~1.875MHz であれば測定数値は1.3以内に収まります。
SSB運用であれば使用できる周波数として 1.848MHz~1.875MHz となりバンド幅は広くありません。27KHzしかありません。運用局は 3KHz 間隔で送信するため混信を考えれば10局も運用すれば満杯です。アンテナ同調点を細かく調整しました。上記アンテナに両端 150mmほど髭を伸ばしました。2mm用直スリーブを使って圧着しました。もちろん防水は自己融着テープで防水します。中心運用周波数を 1.860MHzとしアンテナエレメントの長さ調整は微妙なエレメント長の調整です。100mm以下の長さでもVSWR値は変化します。この調整はアンテナ線両端にある髭の長さ調整で体力勝負です。ちなみに1/2λフルサイズダイポールアンテナ高さは15mhです。
今回使用したバランは1.8MHz動作であり 周波数が低いため L1 の巻き数を多くしました。17t とし L1 +L2 の巻き数は 34t です。トロイダル・コアは T157#2 (赤色) を採用。このコアの NI値は最短磁路長時 42.6 ÷34t =1.25A (78W)ですので100Wには不足しますが 平均磁路長での計算数値は 56.54 ÷34t =1.66A(137W) ですのでほぼ100W型といえます。
追加する1.8MHz帯ダイポールアンテナ高さは 3.5MHz帯と同様の15mhになりました。その結果7MHz帯ダイポールアンテナは移設となります。1/2λフルサイズでの1.8MHz帯ダイポールを設置完了ですが 両端のサイドポールを新規に工事となり今しばらくは 仮設柱13mh孟宗竹で運用となります。後日 本設・多段鋼管柱設置工事が一人親方仕事では労力及び時間のかかる作業です。工期としては杉の間伐材足場も仮設し4か月ほどかかりました。山小屋周辺は多段鋼管柱9本、支線とアンテナ線で現在蜘蛛の巣状態です。
令和2年8月19日1.8MHz帯SSB(J3E)運用についての告示がありました。新スプリアス・新技適機種での無線機であれば変更申請せずに運用は可能との告知です。その場合製造者のホームページ等で該当機種であることを確認することが必要です。
現に1.9MHz帯の免許を得ているすべての局はJ3Eの電波形式が免許されていると見做す。
しかし
旧スプリアス規格無線機等においては 旧技適・JARL認定機種等の運用時では直接所轄する総合通信局に変更申請ではなく 遅滞なく変更届を提出しなければ運用できません。電波法違反となります。
このアマチュア無線もいつまで続くやら ! ! ! 衰退途上にある道楽・趣味の世界です。デジタル通信 FT8方式 も可能ですが若者には見向きもされません。当方はQSLカード(交信証)収集には興味ありません。骨董的な無線機器の修復・周辺機器の工作などで遊んでいます。
数か月運用結果
1.8MHz帯フルサイズ 1/2λ ダイポールアンテナでの運用において長所と欠点がありました。このバンド運用は超田舎Bandです。3.5MHz帯ダイポールアンテナと1.8MHz帯ダイポールとでは受信感度に大きな差があります。ノイズレベルにおいて S-4 から S-9 とSメーターでの差が発生しています。1.8MHz帯ダイポールアンテナが正常に同調(VSWR 1.1)しているためです。受信レベルも上昇しますが相手局と共にノイズも同様にレベルが上昇するため了解度(S/N比)は改善されません。1/2λフルサイズのアンテナであるため結構電波としては飛んでいますが 応答する相手局が明瞭に受信できません。このバンドでは耳の良い専用受信アンテナで運用されている方もみかけました。水平ループアンテナ系のようです。受信専用ビバレージアンテナも考えましたが 1.8MHz帯であればアンテナ線長は200mほど必要となります。交信中 ある局長さんからのアドバイスとして耳の良い受信アンテナ 磁界(マグネチック)ループアンテナ がありますよ ! とアドバイスされました。同軸ケーブル3mほどで工作できるようです。1.8MHz帯とは短波帯(HF)とは異なり中波帯(MF)ですね。
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直径1メートルの磁界(マグネチック)ループアンテナ 試作品 |
工作挑戦結果は アンテナ設置場所、地上高など色々実験しましたが受信感度は非常に悪くアンテナ単体では使い物になりません。磁界ループアンテナ用途として中波帯のラジオ放送局受信には効果があるようですが アマチュア無線では垂直偏波、数10~100KWの空中線電力ではありません。微弱な電波をいかに明瞭度を上げるのが必要と思います。
FETを使ったプリアンプを工作し ダイポールアンテナと同様なレベルまで増幅しましたが明瞭度は改善されません。方向探知アンテナのように指向性を変化させても良い結果は得られません。現在使用している1/2λフルサイズ・ダイポールアンテナほどの明瞭度は改善できず実験程度となってしまいました。現在最良受信レベルで+50dBを超える局は3局ほどしかありません。その調査結果はアンテナと電力及び直線距離では G5RV/200W/53Km,ダブルバズーカ/200W/80Km,スローパー/1KW/178Kmです。1.8MHz帯では時間的に長いQSBがあり レベル差は20~30dBほど発生することがあります。雷などの空電ノイズ、自然雑音が多いバンドでもあります。ほとんどの場合交信できた局はノイズレベルから+10~20dB前後です。ちなみに夜間受信ノイズレベルはS9程度を示しています。その時3.5MHz帯1/2λダイポールアンテナに切り替えた場合ノイズレベルはS4程度でした。20dB ATT を入れたような感覚です。アンテナが正常に同調している場合 他のアンテナと比較すると専用アンテナでは受信レベルは改善されます。しかしノイズレベルも同様に上がりますが明瞭度は若干改善されます。アンテナが地上高15m/hであるため 電波打ち上げ角度が高く数100Km程度の距離が最良と思います。1000Kmほどの国内長距離にはあまり適していないと思います。
今後のS/N比改善策として受信専用全波長160mデルタループアンテナに挑戦したいと思います。特性がよければその後送信アンテナとしてアンテナ・カップラー等を改良したいと思いますが。設置場所が限定されるようなビバレージアンテナは指向性があるため設置には躊躇します。
無銭庵 仙人 の独り言
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YAESU FT-101系 機種別トランシーバー |
上図は山小屋でお遊びに使用している骨董品無線機です。骨董品とは骨董価値がありますが ガラクタと呼ぶべきかもしれません。YAESU FT-101シリーズです。フォックス タンゴ ワン・ノー・ワン と呼ばれ一時代を風靡した無線機です。左下から FT-101 右下FT-101B 左上FT-101E 右上FT-101ZD です。この4台は現在でも運用可能な動態保存してあります。第5無線機として取り換え FT-101ZD機を移動局免許として変更申請を電管に電子申請です。電子申請は紙ベースとは異なり結構ややこしい不可解な事柄まで記載しなければなりません。記載方法見本もなく 添付書類としてPDFファイル・jpgなどの多数の添付が必要です。新スプリアス規制が対応できている最新型無線機であれば電子申請は簡単な記載で申請できます。その場合所有している従事者免許で取扱できる範囲と無線機の出力電力が許可されている範囲でないと受理されません。申請に必要な新技術基準適合番号は個別に発行されており 以前可能であった旧技適番号・JARL認定機種名だけでは申請受理されないと思います。その場合は改造機と同様であり出力電力200W未満の場合 JARD・TSS保証認定には新技術基準適合(新スプリアス適合を含む)が証明できる添付書類等が必要となります。その無線機が個別に識別できる機種銘板・シリアル番号・旧技適番号などの証明も要求される場合もあります。無事50W無線機として申請が受理され局免許が発行されました。他にもガラクタと思われる無線機は多数隠れ山小屋で保管してあります。しかし局免許としては登録してありません。古い無線機であり製造後50年近くなるものもあります。FT-101ZD機は元々100W機でありTSS保証認定をもらうのに書類等で苦労しました。保証認定が下りるまで2か月強の日数がかかりました。他のFT-101シリーズは実動しますが局免許に登録してありません。お飾りです。道楽作業で暇つぶし策として修復・調整した無線機器類です。
今回FT-101ZD機を無線局登録するのに理由があります。無線機製造は1980年頃と思います。約37年前の無線機です。現代の無線機はマイコン制御で致命的な故障は少ないと思いますが故障が発生した場合個人が修理・調整できる無線機ではありません。現実にFT-920型機が故障し自己で修復しましたが結構な時間と費用が発生しました。他のFT-101シリーズは補修部品が入手難であるからです。特に終段管の東芝製 6J-S6C が入手難です。予備管も手持ち球がなくなり今後の保守ができません。実動機に搭載してしまいました。ところがFT-101ZD機の終段管は6146Bです。この球は現在保守管としてUSA軍用管未使用軍箱入りの6146Wを6本保管してあります。多少6146Bに比べて規格値は劣りますが 今回50W運用ということで免許が得られたため真空管にとっては軽い運転状態となり真空管の延命となります。しかし真空管規格表などを見直しましたがこの無線機では50W出力といえども真空管にとっては最大規格以上に陽極(プレート)電圧が高く過酷な動作状態であることには間違いありません。もうしばらくは真空管式無線機で堂々と運用ができます。
ただ現状の無線機では他の局と交信した場合問題があります。それはLC発振アナログVFOの安定度です。現代の無線機は水晶発振による基準信号でマイコン制御により発射する電波は周波数変動はほとんどありません。これの回避策としてDDS制御デジタルVFOを工作し5MHz~5.5MHzの外部自励発振VFOとして工事設計書に記載しました。分解能は1Hzです。このおかげでデジタル制御無線機とロングラグチューしても周波数変動はほとんど発生しません。L・C発振アナログVFO搭載機では上記のようなVFOをデジタル化しないことには交信に支障が発生すると思います。
開局当時 A3E の電波では減速機構はダイアル糸掛け 真空管式VFO であり 周波数変動が発生していました。交信においては数多くのビートの中から相手局探しです。近年の無線機ではダイアルはデジタル表示となり基準水晶発振器によるデジタル制御のため周波数変動はほとんどありません。近年の無線機ではHF帯出力電力10W以上無線機必須の
周波数測定装置 が不要となるほど周波数は直読でき安定しています。
現在の運用面ではダイアル周波数表示はアナログダイアルではなくデジタル表示機種であり 外部VFO運用ではTCXO水晶発振器からの基準信号から作成した可変高周波信号で安定しています。プリミックス用各バンド専用水晶振動子の周波数変動が目につくようになりました。30分もすれば周波数変動はほとんど発生しません。初期周波数変動は50Hz以内に収まっています。付属アナログVFO運用では交信に支障が発生します。SSB運用100Hz以上の周波数変動があるようでは無線機として使い物になりません。
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YAESU FT-101ZD 6146B 終段管パラレル接続 |
参考記載
旧スプリアス規格の無線設備の取り扱いについて
(総務省 総合通信局から添付されていた事項)
* 平成29年12月1日以降は、旧スプリアス規格の無線機について開設、追加(増設)又は取り換えの申請手続きを行うことができません。
* 平成34年11月30日までに、次のいずれかにより対応並びに手続きを行ってください。
①新スプリアス規格の無線機への取り替え。
②旧スプリアス規制の無線機について、次のいずれかにより新スプリアス規格に適合していることを確認の上、[スプリアス不要発射の強度確認届出書](a・bは測定ーターが必要)を提出
a.フィルターの挿入(あらかじめ無線局変更申請による許可が必要です)
b.実力値の確認
c.製造者等が測定したデーターの活用
d.保障(200W以下の送信機) 保証業務実施者 JARD.TSSなど
今回 旧技適機種・JARL認定機種などの骨董品と思われる無線機5台取り替えによる変更申請をしました。申請は電子申請による平成30年1月でしたので
d.TSSによる保証による50W移動局として免許状が平成30年2月に総合通信局より交付されました。
ということは
新スプリアス規格に適合している無線設備と国からは判断されたと解釈します。現在の無線局免許状の有効日は平成34年8月です。たぶんそのままで再免許申請ができると判断します。
下図は再免許申請後届いた無線局免許状の記載事項の一部です。申請前の無線局免許状の有効期限が平成34年8月14日(令和4年8月14日)までとなっており 無線局免許の再免許申請は交付された免許状の期間満了1年前から1か月前までに申請するように法律で定められています。今回期間満了の1年前となったため再免許申請を電子申請しました。届いた免許状の免許の年月日は 令和4年8月15日から令和9年8月14日と明記されており 発行日は令和3年8月30日です。令和4年(平成34年)11月30日までとなっていた新スプリアス規格問題については当局の無線設備は新スプリアス規格を満足しているため 備考欄は付帯事項の記載はありません。令和9年8月までは現有システムでアマチュア無線運用ができるようになりました。交付された無線局免許状の効力として令和4年8月14日までは旧の免許状と共に無線設備によく見える場所に掲げなければなりません。移動する無線局免許状は常置場所保管でもよかったと思います。50数年前 当時の無線局免許状の記載事項では 終段陽極・遮蔽(しゃへい)格子同時変調 A3(A3E),空中線電力10W(入力電力24W) 運用周波数表示 KC (Hz)で開局した時とは局免許状については扱いは変わっていますね。開局時の従事者免許証では いがぐり頭の白黒写真が貼ってありました。発行者は郵政大臣で表紙は.オレンジ色です。
電波法施行規則第38条第1項により無線局免許状は無線局に備え付けるものとされるが、同条第3項により移動局については常置場所に備え付けねばならない。
以前1.8MHz帯については"音声による通信を追加" を所管する通信局長あてに書面による変更届を提出済みであり 1.8MHz帯でのSSB運用は許可されていることになります。一括コード 3MA が明記されています。
上図では 個人情報を記載している事項については非開示とさせていただきます。2021/09/03追記
又これからの5年間では アマチュア無線をほとんど運用されていない ペーパー・ハム(無線局)などは新スプリアス規制により簡単に無線局再免許申請ができず 廃局となる無線局が増加すると思います。なぜなら新スプリアス規格をクリアするにはスプリアス保証となるわけですがですが 旧技適機種であっても改造機と同様の書類・確認事項書・証明写真などの新規申請と変わらない複雑な書類等作成作業が待ち受けています。特に所有している従事者免許での操作範囲を超える闇無線機で運用されている無線局は再免許申請において困惑すると思われます。
追記
令和4年11月30日までとしていた新スプリアス問題ですが このコロナまん延によりかもしれませんが 新スプリアス規格への切り替えが延長となりそうです。旧スプリアス規格無線機においては令和4年11月30日までと一部の無線局免許状に記載されていますが
記載事項についての使用期限の条件は付されていないとみなすとともに 令和4年12月1日以降 他の無線局に妨害を与えない旨の条件が付されていることとみなす。
上記通達により従来通り免許された無線機器での継続運用が可能のようです。記載事項の解釈として事実上 旧スプリアス規格無線設備でも条件は付くが運用可能 となるのは確実です。しかし新スプリアス規格については継続され 変更申請・増設機器については新スプリアス規格が適用されます。
2021/06/15追記
現代では真空管式無線機で運用される方はほとんど見かけません。アマチュア無線としてはSSB運用は常時キャリヤはありませんが 常時キャリヤのある真空管式AM機からの運用開始から通算すればアマチュア無線家として半世紀ほどのキャリヤはあります。真空管式オーディオがメインの道楽・趣味ですが 時々しか運用できない山小屋でのアマチュア無線運用いつまで続くやら ! ! ! 高所作業もきつくなりました。
使用している同軸ケーブル 藤倉 8D-SFA , 5D-SFA と N接栓
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フジクラ 8D-SFA 同軸ケーブルの構造とN接栓の防水性 右端 5D-SFA |
フジクラ 8D-SFA 同軸ケーブルとN-Pコネクターの内部構造
上記画像左上 8D-SFA とN-Pコネクター 中央 パネル用 N-Jコネクター 右 パネル用M-Jコネクター
その下 藤倉 8D-SFA 同軸ケーブ内部構造 その下 5D-SFA 用N-Pコネクターの各パーツ 5D-SFAとコンタクトピン
画像下 8D-SFA N-Pコネクター内部パーツ
上記画像で 8D-SFA の同軸ケーブルと 5D-SFA の同軸ケーブル太さの違いはオレンジ色の防水パッキンの内径でもケーブル太さの違いが判明すると思います。又絶縁物である円形セパレーターなどはテフロン製です。
上図のように 8D-SFA の内部構造はアマチュア無線でよく使われる 5D-2V とは異なります。又コネクターもM接栓とは内部構造に相違があります。高発泡の絶縁体の外側にはフィルムに銅を蒸着したシールド層の外側には銅線網の2重構造です。又Nコネクターは防水性が強化されておりオレンジ色の部分が防水ゴムパッキンです。中心導体は直径約3mmです。この同軸を曲げ加工する場合 8D-SFA同軸ケーブルの構造上 100R 以上としなければなりません。
無線設備に使用される同軸ケーブルの種類
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各種 同軸ケーブルと接続コネクター類 |
上図は各種の同軸ケーブルです。アマチュア無線でよく使用されるのが画像の左から2番目の 5D-2V 灰色です。左端はN接栓付き 藤倉5D-SFA 中央藤倉 8D-SFA 右から2番目が携帯電話基地局用 日立電線 10D 及び20D の特殊同軸ケーブルです。10D,20Dの同軸ケーブルは中心導体が銅パイプであり コネクターおよびアンテナ等に接続する場合は専用の接続用コンタクトピンで接続します。
3D-2Vは数多く見つけ出せません。同等の同軸ケーブルとしては RG58AU が市販品としてよく見かけますので利用されている方も多いと思います。元々RGタイプの同軸ケーブルは米軍規格品です。
コネクター等接続部の防水テープ
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推奨防水テープ 各10m巻き |
又屋外ではコネクター部に自己融着テープを巻いた後 仕上げテープを巻き付け防水性能を向上させます。
推奨テープ種 アサヒNテープ(自己融着) アサヒSテープ(仕上げ)
この防水テープは携帯電話基地局のアンテナ設備などに使用されるテープ種であり特に自己融着テープは もしも防水部を分解する場合コネクターにテープかすが残留することが少なく使いやすいテープ種です。通常のビニール絶縁テープに比較すると結構高額です。又自己融着テープの使い残しなどは必ず梱包されていた状態で保管してください。無理な圧力により使用できない場合があります。
旧品番 住友スリーエム製 Fテープ・Cテープでしたが 現在住電機器システムが同等品を販売しています。
アンテナ線を引っ張るロープについて
現在単独で運用している各バンドごとのダイポールアンテナは 1.8MHz帯から21MHz帯まで5本を常用使用しています。各アンテナ支柱は鋼管柱であり支線はワイヤーで固定してあります。滑車を使ってアンテナ線を昇降できるようにしてありますが アンテナ線と接続しているロープは今までは安価な標識ロープ・工事用通称トラロープを採用していましたが 屋外で風雨にさらされるため紫外線により数年もすればひび割れによる劣化が発生し5~6年もすれば交換しなければなりません。今回全数対候性のクレモナロープに変更しまた。6mm直径ロープを合計300m購入し交換しました。難点は高額であることです。しかし耐久性があり以後交換する頻度は少なくなると思います。購入したのは国産クレモナクレモナSロープで材質はビニロンが主でありアマチュア無線用途として最良と思います。(2021/12 追記)
参考資料
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Tシリーズ・トロイダルコア・データー表 |
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FTシリーズ・フェライトトロイダルコア・データー表 |
by musenan sennin